多頭飼いのごはん(器・水・食べる場所の分け方)
猫は本来、ひとりで少しずつ食べる動物です。何匹かいる家では、器と水を猫ごとに用意し、離れた場所に置くことがすすめられています。
- 猫どうしの緊張は、多頭飼いの家の6〜9割で見られるという調査があります。にらむ、通り道をふさぐなど、目立たないサインが多いとされます。
- 器と水は猫ごとに用意し、たがいに見えない離れた場所に置くことがすすめられています。
- 療法食など食事の違う猫がいるときは、場所や時間を分ける、決まった猫だけが開く給餌器を使うなどの方法が挙げられています。
- 器に入れた量と残った量、体重を記録すると、だれがどれだけ食べているかをつかむ手がかりになります。
器や水を分けたほうがよい理由
猫は、母猫と子猫をのぞけば、ひとりで狩りをして食べることが多い動物とされます。少しずつ何回も、ひとりで食べるのを好むとされています。
そのため、食べ物の取り合いが、猫どうしの対立のもとになることがあります。ふだん避けている猫のそばで食べさせると、不安やストレス、体の不調につながるとされます。
多頭飼いの家では、1匹あたりの食事の場所やトイレが少なくなりがちです。そのぶん、なわばりや猫どうしの対立のリスクが上がるとされます。
猫の獣医学会(米国猫臨床医協会と国際猫医学会)には、暮らす環境についての指針があります。食事・水・トイレ・休む場所などを、複数、離して置くことを柱の1つにしています。取り合いを避けるだけでなく、ストレスやストレスに関係する病気のリスクを下げるとしています。
同じ指針は、家のどの猫にも自分専用の食事の場所を用意し、食事と水も離して置くよう書いています。
いっしょに食べているから仲がよい、とは限りません。食べ物が1か所にしかないので集まっているだけのこともあり、時間をずらして使う猫も多いとされます。
- 器は猫ごとに。指針では、どの猫も食事の場所を最低2つから選べるように、としています。理想は猫1匹につき2〜3か所の食事と水の場所、とする団体もあります。
- 器どうしは、たがいに見えないように離します。目隠しは、ふせた段ボール箱でもよいとされます。
- 水は、食事やトイレとも離して置きます。多頭飼いでは、けんかで水が飲めなくならないよう、水飲み場を何か所かに置くことが欠かせないとされます。
- 食事の場所は、トイレや家の出入り口、人の行き来が多い所から離します。ほかの動物がいることや物音も、猫が食べるのをためらう理由になるとされます。
器を分けている家ほど、猫どうしの仲が悪いと答えた調査もあります(北米の2匹飼いの飼い主6,529人)。ただし著者は、仲が悪くなってから器を増やした家が多い可能性を挙げています。分けたせいで仲が悪くなった、という意味ではありません。
猫どうしの緊張のサイン
猫どうしの緊張(仲がうまくいっていない状態)は、多頭飼いの家の62〜88%で見られるという調査があります。
サインは目立たないことが多く、飼い主に気づかれにくいとされます。米国猫臨床医協会の指針(2024年)は、次のようなものを挙げています。
ストレスにうまく対処できないと、トイレをがまんするなどして、膀胱炎などにつながったり悪くなったりすることがあるとされます。
- じっとにらむ、通り道をふさぐ。米国の調査では、にらむことがいちばん多く見られました。
- その場を立ち去る、隠れる
- 食欲が落ちる、あまり動かない、よく眠れない、トイレに行かない
- 毛づくろいのしすぎ、尿のマーキング、トイレの使い方が変わる
- うなる、たたく、追いかける、取っ組み合う(はっきりしたサイン)
ごはんの前後も見てみましょう。食べてはいても、食事の前ににらんだりたたいたりが増え、急いで食べてすぐ立ち去ることがあるとされます。ほかの猫を避けたい猫が、一気に食べては吐く習慣になることもあります。ふだんの様子の変化は、猫どうしの問題のほか、病気のこともあるとされます。続くときは動物病院に相談しましょう。
食事の違う猫がいるとき(療法食・年齢・体型)
年齢によって、合うごはんは違います。成猫用を子猫に与えると栄養が足りず、子猫用を成猫に与えるとカロリーが多すぎて太る、と環境省は説明しています。
猫の獣医学会の指針も、すべての猫を同じように扱わなくてよいとしています。病気で特別な配慮がいる猫もいるためです。
療法食(病気の食事管理に使うフード)は、獣医師の指導のもとで与えるものです。栄養の特ちょうが総合栄養食と違い、長く不適切に使うと健康をおびやかすおそれがあるとされます。
まとめて置くと、ある猫がほかの猫のごはんを食べてしまうことがあります。食べ物にありつけず、栄養が足りなくなる猫もいるとされます。
年齢の違う猫がいる家では、全成長段階用のフードを選ぶと選びやすい、とコーネル大学は説明しています。その場合も、量は猫ごとに体重を見て決めましょう。
分け方として、次のような方法が挙げられています。根拠の強さは方法によって違います。
- 場所を分ける:猫ごとに別の場所や部屋で食べさせます。別の部屋だと食べない猫には、目隠しだけでもよいとされます。専門家の指針と行政の資料にある方法です。
- 時間をずらす:食べる時間をずらし、食べ終わったらすぐ片づけます。環境省の資料にある方法です。
- 通れる猫を決める:ベビーゲートや、体の大きさで通れる猫が決まる入り口で分けます。身軽な猫だけが届く高い棚を使う方法もあります。専門家の声明にある方法です。
- 決まった猫だけが開く給餌器:マイクロチップや首輪のタグを読み取る給餌器があります。減量が必要な猫23匹の小さな試験では、この給餌器の群のほうが、器の群より理想の体型に届いた猫が多くいました(器の群は0匹)。給餌器の会社が資金を出した研究です。
犬もいる家では、犬用のフードを猫が食べ続けないようにします。犬と猫では必要な栄養が違い、長く食べると健康上の問題につながるおそれがあるとされます。犬用のフードには、猫に悪影響のおそれがある成分(プロピレングリコール)が入ったものもあります。分け方に迷うときは、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
だれがどれだけ食べたか分かるようにする
室内の猫は、ほかの猫といっしょに1か所で、猫ごとに必要な量を考えずに与えられていることが多い、と指摘されています。
猫が実際に適切な量を食べているかを、飼い主が確かめるよう勧められています。体重と体型は定期的に見ます。高齢の猫や持病のある猫では、とくに大切とされます。
毎日見ている猫だと、やせたのにも太ったのにも気づきにくいものです。
- フードは、グラム単位のキッチンスケールで量る方法があります。計量カップでは、量が不正確になる飼い主がいると報告されています。
- 器に入れたときと24時間後に量ると、どれだけ食べたか分かります。
- 体重は週1回くらい量るのがおすすめとされます。人が抱いて量る方法もあります。赤ちゃん用の体重計のほうが、小さな変化に気づきやすいとされます。
- 体重と体型の記録は、どの年齢でも、変化に早く気づくために大切とされます。上と横から写真を撮っておくのも助けになります。
ほかの猫に食べられて、足りていない猫がいることもあります。食べる量が減った猫や、体重が減っている猫がいたら、早めに動物病院へ相談しましょう。
食事のパズルとフードを使った遊び
食事のパズル(転がしたり、前足でかき出したりするとフードが出る道具)は、狩りをまねた自然な食べ方ができるとされます。
パズルや、フードを家のあちこちに隠す方法は、活動を増やし、心と体に刺激を与え、体重の管理にも役立つとされます。
じゃらしを「つかまえる」とカリカリが散らばる遊びも紹介されています。
ただし、パズルの効果は研究が始まって間もない分野です。報告の多くは、ほかの工夫も同時にした例をふり返ったもので、パズルだけの効果は分かっていません。
- 多頭飼いでは、猫ごとに自分のパズルを用意します。人気の型があれば、同じ型を増やします。取り合いや、同じ場所で食べさせられることを避けるためです。
- はじめは、器から食べるのと同じくらい簡単にします。まずは簡単に動かせる型から始めるよう勧められています。
- 解けないほど難しいと、欲求不満から、怖がったり攻撃的になったりすることがあるとされます。
- 保護施設で集団で暮らす猫27匹のうち23匹がパズルを使い、猫どうしの攻撃は増えなかったという研究があります。
- タイマー式の自動給餌器も役立ちますが、ふつうは狩りのような動きにはならないとされます。
パズルを使うときも、その猫が必要な量を食べられているか確かめましょう。
今日からできること
- 器と水を猫ごとに用意し、たがいに見えない場所に離して置く。
- 水飲み場を何か所かに増やし、食事やトイレとは離す。
- ごはんの前後に、にらむ、ふさぐ、急いで食べて立ち去る猫がいないか見る。
- 療法食や年齢の違う猫がいるなら、場所か時間を分ける。分け方は獣医師と相談する。
- 器に入れた量と24時間後に残った量を量る。週1回くらい体重を量ってメモする。
- 食事のパズルは猫ごとに1つ。簡単な型から始める。
このページは、飼い主さん向けの一般的なお話です。気になる様子があるときや、持病のある子のごはんは、かかりつけの先生に相談してくださいね。
参考にした資料(15件)
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- 環境省 自然環境局 動物愛護管理室「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~(5.Q&A)」(2018) www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide
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