食物アレルギーと除去食試験(症状・期間・検査)
猫の食物アレルギーは、かゆみなど皮膚の症状で気づかれることが多い病気です。確かめる方法は、獣医師と行う除去食試験です。血液検査だけでは決められないとされています。
- 皮膚に出る食物アレルギーの猫は、ほぼすべてにかゆみがあったと報告されています。顔や頭をかく猫が多く、吐く・下痢が見られることもあります。
- かゆみのある猫のうち、食物アレルギーは1〜2割ほどという報告です。かゆみの原因でいちばん多いのはノミとされます。
- 確かめるには、獣医師と「除去食試験」を行います。6〜8週間ほど決めた食事だけを続け、その間はおやつもほかの食べ物も与えません。
- 血液のアレルギー検査は、犬や猫の食物アレルギーの診断には信頼できないとされています。
見られると言われる症状(かゆみ・皮膚・おなか)
食べ物への反応は、おもに皮膚とおなかに出るとされます。
皮膚に出る食物アレルギーの猫210匹の報告をまとめた総説(研究をまとめた論文)があります。ほぼすべての猫に、かゆみがありました。顔や頭がかゆかった猫は、半数ほどでした。首・おなか・耳も、かゆがることが多い場所でした。
よく見られた皮膚のようすは、次のとおりです。どれも、食物アレルギーだけに見られるものではありません。
- 左右対称の毛の抜け(なめすぎによるもの)
- 頭や首の、かき傷・かさぶた
- 粟粒状皮膚炎(体じゅうにできる2〜3mmの小さなかさぶた)
- 好酸球性の皮膚の病気(アレルギーに関係することが多い、ただれやしこり)
- 吐く・下痢:皮膚以外の症状では、この2つがいちばん多いとされます。
猫はこっそり毛づくろいをすることがあり、なめすぎで毛が抜けても気づかれにくいとされます。かく・なめる回数が増えたら、動物病院に相談しましょう。かき続けると傷ができ、細菌の感染を起こしやすくなるとされます。長く続く吐き気や下痢でも、早めに除去食試験を考えるよう勧められています。
どのくらい多いと言われている?
食物アレルギーの割合は、どんな猫を調べたかで大きく変わります。猫の9つの研究をまとめた総説では、皮膚に出る食物アレルギーは次の割合でした。
- 大学病院に来た猫全体:0.2%
- 皮膚の病気の猫:3〜6%
- アレルギーによる皮膚の病気の猫:5〜13%
- かゆみのある猫:12〜21%
かゆみのある猫502匹を調べた研究では、ノミのアレルギーが29%、食物アレルギーが12%でした。ノミ・食物以外のアレルギーが20%、アレルギー以外の病気が24%です。おなかの症状では、ほかの原因を調べて除いた慢性の猫55匹のうち、16匹(29%)が食べ物に反応していました。ただし研究の多くは大学や専門の病院のものです。食物アレルギーの犬猫の2〜3割は、ほかのアレルギー(ノミ・環境)も同時に持つとされます。
原因になりやすいと報告された食材
原因の食材が1つ以上わかった猫78匹の報告を、まとめた総説があります。多かった順に、次のとおりです。
- 牛肉:14匹(18%)
- 魚:13匹(17%)
- 鶏肉:4匹(5%)
- 小麦・とうもろこし・乳製品:各3匹(4%)
- 羊肉:2匹(3%)。卵・大麦・うさぎも1匹ずつ報告されています。
この順位は、皮膚の症状が出た猫について、食べさせて症状が戻った食材を数えたものです。吐く・下痢の原因になりやすい食材を示したものではありません。また、多くの研究は少しの食材しか試しておらず、本当の割合はもっと高いとみられています。昔からフードによく使われてきた材料が、多く出ているだけかもしれないとも書かれています。おなかの症状の猫の研究では、原因はふだんの食事の材料で、半数は2つ以上の材料に反応していました。
診断は除去食試験で(期間・食事・注意)
食物アレルギーを確かめるいちばん確かな方法は、除去食試験と、その後の負荷試験とされます。負荷試験は、元の食事に戻して症状が出るかを見る試験です。おなかの症状の猫の研究でも、症状や血液検査、腸の組織の検査では診断できないとされています。
除去食試験では、それまで食べたことのないたんぱく源と炭水化物源の食事を、数週間続けます。よくなったら元の食事に戻し、悪くなるかを見ます。もう一度除去食でよくなれば、食べ物への反応と確かめられます。
使う食事は、獣医療チームが選びます。家で作る食事か、たんぱく質を細かく分解した「加水分解食」が使われることがあります。家で作る食事は栄養がかたよるおそれがあり、獣医師などの指導のもとでだけ与えるものとされます。
新しいたんぱく源の例として、鹿肉・うさぎ・あひるなどが挙げられています。何が「新しい」かは、その猫が今まで何を食べてきたかで変わります。
加水分解食は、たんぱく質を壊して、アレルギーのもとを取り除くことをねらっています。ただ、壊しきれずに反応が残ることがあり、元の材料も考えて選ぶとされます。
市販の「限られた材料」のフードを調べた研究では、表示にない材料が見つかった割合は、研究によって33〜83%でした。加水分解のフードを調べた6つの研究では、表示と違ったのは1製品だけでした。海外の製品の研究です。
期間の目安は、6〜8週間とされます。猫40匹のデータでは、4週間で半数、6週間で8割、8週間で9割の猫の症状が落ち着きました。コーネル大学(米国)は、少なくとも8〜10週間としています。
試験の間は、次のことを守ります。
- 決めた食事と水のほかは、何も与えません。
- おやつ、人の食べ物の残り、味のついた薬もやめる必要があります。薬は自分の判断でやめず、獣医師に相談しましょう。
- 外で狩りをする猫や、近所で食べ物をもらう猫では、試験が難しくなります。
- よくなるまで、数週間以上かかることがあります。
- 元の食事に戻したあと、猫では半数が4日、9割が7日までに症状が戻ったとされます。
原因とわかった材料は、その後も食事から除くことが、対処の中心とされます。どの材料が原因かは、元の食事の材料を1つずつ戻して確かめます。自己流で始めず、獣医師と計画を立てて行いましょう。
血液検査などの検査と、食物不耐症との違い
食べ物のアレルギーを血液で調べる検査は、多くの国で行われています。しかし、犬や猫の食物アレルギーの診断には信頼できない、と総説はまとめています。
猫では、血液のIgE(アレルギーに関わる抗体)検査の正確さは低かったとされます。同じ血液を分けて調べても、結果がそろわなかった研究もあります。おなかの症状の猫の研究でも、血液のIgE検査は役に立ちにくかったとされます。
リンパ球(白血球の一種)の反応を見る検査は、正確さが高めでした。ただ扱いが難しく、2017年の総説では研究用の検査とされています。猫のデータは、とても少ないのが現状です。
毛やだ液で調べる検査も、満足できる結果ではなかったとされます。環境のアレルギーの検査についても、結果は当てにならないことがある、とiCatCare(国際的な猫の団体)は書いています。
食べ物で体調をくずすことには、食物アレルギー・食物不耐症・食物中毒が含まれます。食物アレルギーは、体の免疫が関わる反応です。免疫が関わらないものを、食物不耐症と呼びます。
身近な例が牛乳で、多くの猫は乳糖(牛乳の糖)をうまく消化できないとされます。乳製品で、おなかをこわすことがあります。
実際には見分けられないことも多く、「食物不耐症」「食事に反応する皮膚病」と呼ばれることもあります。食べ物そのものでなく、添加物や保存料への反応のこともあるとされます。
除去食でよくなっても、アレルギーとは限りません。慢性の腸の病気の猫は除去食によく反応しますが、元の食事に戻して再発するのは一部とされます。おなかの症状の猫の研究でも、55匹中11匹は、元の食事に戻しても再発しませんでした。
今のところ、食物アレルギーを確かめるいちばん確かな方法は、除去食試験とその後の負荷試験とされています。検査の結果だけで食事を決める前に、獣医師に相談しましょう。
今日からできること
このサイトの「合わなかったフードから原因を探す」は、合わなかったフードどうしの原材料の共通点を見つける道具です。アレルギーの診断ではありません。
一方で、除去食には、それまで食べたことのない材料を選びます。これまで食べたフードやおやつの原材料の記録は、獣医師に相談するときの手がかりになります。
- かく・なめる・毛が抜けるのに気づいたら、いつから・どこを、をメモして動物病院に相談する。
- ノミ対策ができているか確かめる。猫の皮膚の病気の原因で、最も多いのはノミとされます。
- 今のフード・おやつ・薬の名前と原材料を、写真やメモで残しておく。
- 吐く・下痢が続くときは、回数と日付を記録して受診する。
- 血液検査の結果だけで、食事を決めない。
- 除去食試験を始めたら、家族全員で「決めた食事と水だけ」を守る。
- 手作りの除去食は、獣医師の指導のもとで行う。
このページは、飼い主さん向けの一般的なお話です。気になる様子があるときや、持病のある子のごはんは、かかりつけの先生に相談してくださいね。
参考にした資料(18件)
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確認日:2026-10-17。獣医師の監修は受けていません。上の資料をもとに、運営者がまとめています。