歯みがきと口の健康(歯周病・吸収病巣のサイン)
猫の口の病気はとても多く、猫は痛みを隠すので気づかれにくいものです。家での手入れは毎日の歯みがきがいちばんとされます。少なくとも年1回は、動物病院で口を診てもらいましょう。
- 3歳以上の猫の85%に、何らかの歯の病気があると考えられています。歯が溶けていく吸収病巣も多く、5歳を超える猫の7割以上にあると推定されます。
- 食べにくそう、片側でかむ、よだれ、口臭は、口の痛みのサインのことがあります。猫は痛みを隠すので、サインがなくても重いことがあります。
- 家での手入れは、毎日の歯みがきがいちばんとされます。人の歯みがき粉は猫に安全でないので使いません。
- デンタルフードやおやつは、歯みがきができない猫の次の手です。歯垢や歯石を減らす助けにはなっても、つかなくするものではないとされます。
猫に多い口の病気
歯と歯ぐきの病気は、猫にとても多い病気です。3歳以上の猫の85%に、何らかの歯の病気があると考えられています。年をとるほど多く、重くなるとされます。
英国の動物病院91院の記録を調べた研究でも、猫で最も多く記録された病気は歯周病でした。記録された猫の13.9%です。
猫に多い口の病気は、歯肉炎・歯周炎・吸収病巣の3つとされます。歯の病気は強い痛みを起こし、食べなくなる原因にもなります。
- 歯肉炎(歯ぐきの炎症):ふつう、歯垢(細菌のすむ膜)が歯にたまることから始まります。歯肉炎になっても、多くは元に戻せるとされます。
- 歯周炎:歯肉炎が進み、歯を支える組織がこわれる病気です。歯がぐらついたり抜けたりすることがあり、やがて元に戻せなくなります。
- 吸収病巣(歯が内側から溶けていく病気):猫の歯が抜ける原因で最も多いとされます。猫の3〜7割に見られるという説明や、5歳を超える猫の7割以上にあるという推定があります。原因はわかっていません。
- 慢性歯肉口内炎:歯ぐきから口の中のほかの部分にまで、炎症が広がる病気です。とても痛く、食べにくい、よだれ、前足で口をさわるなどが見られます。
吸収病巣は、歯と歯ぐきの境目のピンク色の欠けとして見つかることが多いとされます。見えるころには、歯はかなり傷んでいます。なお、生後5か月ごろは、乳歯が抜けて永久歯が生えます。このとき歯ぐきに炎症が起き、口がにおうことがよくあります。ふつうのことで、4〜6週で落ち着くとされます。
口の痛みのサイン
猫は痛みを隠すので、サインがないのに重い歯の病気があることも珍しくないとされます。歯の痛みは家では気づかれにくい、と米国の猫の獣医師の団体も書いています。
次のようなようすは、口の痛みや歯の病気のサインのことがあります。気づいたら、動物病院に相談しましょう。
- 食べるのをためらう、食べにくそう、食べなくなる
- 頭をかたむけて、片側だけでかむ。食べ物を口からこぼす
- ドライをかまずに飲みこむ、急にやわらかいものばかり好む
- よだれ、口臭
- 歯ぐきが赤い、腫れている、血が出る
- 前足で口をさわる、頭をふる
- 毛づくろいが減る、体重が減る
- 水を飲むのをためらう
歯の病気の痛みは、猫が食べない理由として多いとされます。猫は、24時間食べないだけでも体に大きく響くことがあります。まったく食べない、食べる量がはっきり減ったときは、できるだけ早く動物病院に連絡しましょう。
家での歯みがき(いちばん確かな手入れ)
歯みがきは、歯と歯ぐきを健康に保ついちばんの方法とされます。歯垢や歯石ができるのをおさえ、歯ぐきを健康にし、口臭も減らすとされています。最も確かな方法(ゴールドスタンダード)は、歯みがきとされています。
理想は1日1回です。歯みがきで取れるのは歯垢だけで、効果を得るには毎日みがく必要があるとされます。すでについた歯石は硬く、歯みがきでは取れません。動物病院で、麻酔をかけて取るのがふつうです。
道具は、猫用の歯ブラシと猫用の歯みがき粉です。歯ブラシは、だ液を通して感染が広がらないよう、猫ごとに1本ずつ用意します。歯みがき粉には鶏肉や魚などの味があり、好きな味を探せます。指にはめるブラシは、かまれる危険があるので、たいていは避けたほうがよいとされます。
子猫はすぐ慣れることが多く、年をとった猫は時間と根気が要るとされます。歯みがきをしたことのない成猫でも、少しずつならどの年齢からでも始められます。毎日、同じ時間に行うと続けやすいとされます。
歯肉炎がひどい猫は、歯みがきがとても痛いことがあります。始める前に獣医師に相談しましょう。歯石取りや抜歯のあとは、口の傷が落ち着くまで待ってから始めます。
コーネル大学(米国)は、4週間かけて慣らす方法を紹介しています。英国の猫の団体の手順とあわせると、次のようになります。
- 1週目:歯ブラシと歯みがき粉を、猫が調べられる所に置きます。毎日、指につけた歯みがき粉のにおいをかがせてなめさせ、なめたらごほうびをあげます。
- 口のまわりをさわられることにも慣らします。やさしくなで、最後はごほうびで終えます。唇を持ち上げられるまで、少しずつ進めます。
- 2週目:毎日、犬歯(長い牙)に歯みがき粉を少しつけ、ごほうびをあげます。
- 3週目:歯ブラシにつけた歯みがき粉をなめさせます。
- 4週目:唇をそっと広げ、歯と歯ぐきの境目にブラシを45度に当てて、やさしくみがきます。みがくのは外側だけでよく、内側は猫の舌がきれいにするとされます。
- 猫の背中を自分のほうに向けると、猫がこわがりにくく、動いても押さえやすいとされます。奥歯から始めて前へ進め、片側10秒から30秒まで少しずつのばします。
- 嫌がるそぶりを見せたら、やめて翌日にまた試します。それぞれの段階に何日かかってもかまいません。
- 最初は歯ぐきから少し血が出ることがありますが、続けるうちに止まるとされます。
人の歯みがき粉は使わないでください。猫には安全でなく、毒になることもあるとされます。猫の嫌がる味で、胃を刺激することもあります。やり方に迷ったら、動物病院で看護師が見せてくれることもあります。
動物病院で口を診てもらう頻度と治療
猫の歯は、少なくとも12か月に1回は獣医師に診てもらうのが理想とされます。歯の病気があった猫は、状態に応じて3〜6か月に1回です。早く見つかるほど、治療は楽で早いとされます。
米国の獣医師の団体のガイドラインも、すべての猫に少なくとも年1回の診察を勧めています。10歳を超えたシニアの猫は、少なくとも6か月に1回です。歯周病と吸収病巣は、年とともに増えるとされます。シニアの猫は、毎回の診察で歯を全部診ることが欠かせないとされています。
毎日歯みがきをしていても、麻酔をかけた検査やレントゲン、治療が要らなくなるわけではないとされます。歯周病や吸収病巣をくわしく調べるには、麻酔をかけたレントゲンや歯ぐきの検査が必要です。
治療は、麻酔をかけた歯石取りと研磨が中心で、重いときは歯を抜きます。吸収病巣の有効な治療は、その歯を抜くことだけとされます。歯を抜いた猫は、すべての歯を抜いた場合でもよく適応するとされます。
歯肉炎は、重い腎臓病や糖尿病、ウイルスの感染など、体の病気から起こることもあります。また、歯周病は、慢性腎臓病のなりやすさと関係するかもしれないと言われています。まだ「可能性」の段階です。
麻酔をかけない歯石取りは、米国の獣医歯科の専門医の団体が「適切でない」としています。歯周病が進むのは歯ぐきの中ですが、そこの歯の面には麻酔なしでは届きません。見える歯石を取るだけでは、見た目が変わるだけとされます。舌側の歯の面も診られず、病気を見落としやすいとされます。麻酔の危険はゼロではありませんが、今の方法で小さくなっているとされます。不安なことは、獣医師に相談しましょう。
デンタルフード・おやつの根拠はどのくらい?
歯みがきができない猫のために、歯垢や歯石がたまるのを遅らせるよう作られたフードがあります。粒を大きくしたり独特の食感にしたりして歯の表面をこする、または成分でおおう仕組みです。
デンタルガムは、歯垢や歯石ができるのを減らす助けにはなっても、つかなくするものではないとされます。デンタルフードは、歯みがきを受け入れない猫のよい選択肢として紹介されています。どちらも、歯みがきができないときの次の手という位置づけです。
歯みがき粉が好きな猫なら、ドライやデンタルガムにつけて与え、歯にこすれるようにする方法もあります。
ふつうのドライフードは、粒の硬さや形が歯垢に効くほどとは限りません。効いても、すべての歯の面に届くとは限らないとされます。食事と歯の病気の関係は、はっきりしていないとも書かれています。
「歯にいい」とうたう製品は多い、と米国動物病院協会の歯科ガイドラインは書いています。そのうえで、決められた基準を満たしたといえるのは、VOHC(米国の獣医口腔衛生協議会)が認めたものだけとしています。
- VOHCは、獣医歯科医と歯の研究者9人などでつくる協議会です。
- 自分では試験をせず、決められた方法で行われた試験のデータを審査して認めます。認めるのは、歯垢、歯石、またはその両方についてです。
- かむおやつやデンタルフード(こすって落とすタイプ)では、ドライフードだけの猫と比べる試験を2回行います。歯垢や歯石が平均で20%以上少ないことなどが基準です。
認証の基準は、歯垢や歯石の量がどれだけ減ったかで決まります。VOHCも、歯の手入れの最も確かな方法は歯みがきとし、口と歯の定期的な診察を勧めています。デンタルガムを選ぶときは、動物病院に相談しましょう。
今日からできること
- 猫の口を見て、口臭や、歯ぐきの赤み・腫れ・出血がないか確かめる。
- 食べ方を見る。片側でかむ、こぼす、かまずに飲みこむときは、動物病院に相談する。
- 猫用の歯ブラシと歯みがき粉を用意し、指につけた歯みがき粉をなめさせることから始める。
- 人の歯みがき粉は使わない。
- 歯ぐきが赤い、痛がるときは、歯みがきを始める前に獣医師に相談する。
- 少なくとも年1回、10歳を超えたら6か月に1回は健診を受け、歯も診てもらう。
- デンタルフードやおやつは、歯みがきの代わりではなく次の手として考える。
このページは、飼い主さん向けの一般的なお話です。気になる様子があるときや、持病のある子のごはんは、かかりつけの先生に相談してくださいね。
参考にした資料(19件)
- International Cat Care(iCatCare。ISFMの母体の慈善団体)「Dental disease in cats」(2025) icatcare.org/articles/dental-disease-in-cats
- Cornell Feline Health Center(コーネル大学獣医学部)「Feline Dental Disease」(2017) www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/corne
- Cornell Feline Health Center(コーネル大学獣医学部)「Tooth Resorption」 www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/corne
- International Cat Care(iCatCare。ISFMの母体の慈善団体)「How to brush your cat’s teeth」(2025) icatcare.org/articles/how-to-brush-your-cats-teeth
- AAHA(米国動物病院協会)「2019 AAHA Dental Care Guidelines for Dogs and Cats: Nutrition」(2019) www.aaha.org/resources/2019-aaha-dental-care-guidelines-for-
- O’Neill DG ほか(英国 王立獣医大学), Vet J 202(2):286-91「Prevalence of disorders recorded in cats attending primary-care veterinary practices in England」(2014) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25178688/
- AAFP(米国猫臨床医協会)、J Feline Med Surg 23(7):613-638「2021 AAFP Feline Senior Care Guidelines」(2021) pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10812122/
- International Cat Care(iCatCare。ISFMの母体の慈善団体)「How to encourage your cat to eat」(2025) icatcare.org/articles/how-to-encourage-your-cat-to-eat
- 環境省 自然環境局 動物愛護管理室「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~(4.体調管理について)」(2018) www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide
- Cornell Feline Health Center(コーネル大学獣医学部)「Hydration」(2021) www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/corne
- Cornell Feline Health Center(コーネル大学獣医学部)「Anorexia」 www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/corne
- International Cat Care(iCatCare。ISFMの母体の慈善団体)「Inappetence in cats」(2025) icatcare.org/articles/inappetence-in-cats
- International Cat Care(iCatCare。ISFMの母体の慈善団体)「Should I feed my cat wet or dry food?」(2025) icatcare.org/articles/should-i-feed-my-cat-wet-or-dry-food
- VOHC(米国 獣医口腔衛生協議会)「Veterinary Oral Health Council(トップページ:What does the VOHC do? ほか)」 vohc.org/
- AAHA(米国動物病院協会)「2019 AAHA Dental Care Guidelines for Dogs and Cats: Recommending Products」(2019) www.aaha.org/resources/2019-aaha-dental-care-guidelines-for-
- AAHA(米国動物病院協会)/ AAFP(米国猫臨床医協会)、J Am Anim Hosp Assoc 57(2):51-72「2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines」(2021) www.aaha.org/globalassets/02-guidelines/feline-life-stage-20
- iCatCare Veterinary Society、J Feline Med Surg「2026 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of chronic kidney disease in cats」(2026) pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13554608/
- AVDC(米国獣医歯科専門医協会)「Position Statement: Companion Animal Dental Scaling Without Anesthesia」(2004) avdc.org/wp-content/uploads/2019/AVDC-pos-stmts/Dental_Scali
- VOHC(米国 獣医口腔衛生協議会)「Trial Protocol Requirements」 vohc.org/trial-protocol-requirements/
確認日:2026-10-17。獣医師の監修は受けていません。上の資料をもとに、運営者がまとめています。