なぜ猫は腎臓が弱りやすい?
年をとるとふえる腎臓の病気について、起こり方と見つけ方、ごはんとの関係をまとめました。
- 慢性腎臓病は高齢の猫によくある病気です[1]。12歳を超える猫の約3割〜8割にみられるという報告があります[1]。
- 初期はほとんど症状が出ません[1]。7〜10歳は年1回、10歳を超えたら年2回の健診が勧められています[1]。
- 療法食は、腎臓病と診断された猫に、獣医師の指導のもとで使うごはんです[2]。
- 健康な猫でリンを控えたごはんを試した試験では、腎臓病になる割合に差は出ていません[3]。
年をとった猫に、とても多い病気です
慢性腎臓病は、腎臓の働きが長い時間をかけて少しずつ落ちていく病気です[1]。
高齢の猫で、最もよく診断される病気のひとつとされています[1]。
12歳を超える猫では、約3割〜8割にみられるという報告があります[1]。調べ方が研究ごとに違うため、数字に幅があります[1]。
見た目は健康な高齢の猫の8%に、健診で症状のない腎臓病が見つかったという報告もあります[1]。10歳を超える猫では15%でした[1]。
英国の5歳以上の猫の調査では、13.6%が腎臓病で亡くなっていました[1]。
なぜ起こるのかは、まだよくわかっていません
腎臓の中では、尿をつくる小さな単位(ネフロン)が失われ、硬い組織に置き換わっていきます[1]。一度失われた働きは、元に戻らないとされています[1]。
多くの猫では、はっきりした原因がわかりません[1]。いちばんはっきりしている危険因子(なりやすくなる要因)は、年齢です[1]。
歯周病(歯ぐきの病気)のある猫は、のちに腎臓病になりやすいという報告があります[4]。ただし、関係が見られたという段階で、原因とは決まっていません[1]。
ごはんの中身(たんぱく質やリンの多さなど)が関わる可能性も議論されています[1]。これもまだ仮説の段階です[1]。
初期は気づきにくく、サインは見逃されやすい
初期は、症状がほとんど、またはまったく出ないことがあります[1]。そのため、見つかるのが遅れがちです[1]。
今の検査では、腎臓の働きがかなり失われてから、はじめてわかることが多いとされています[1]。
英国の動物病院の記録では、腎臓病と診断された猫の約3分の2に、診断の時点ですでに症状がありました[5]。
腎臓病の猫では、診断の3年前から体重が減り始めていたという報告があります[6]。ゆっくり進む体重や筋肉の減りは、「年のせい」と思われやすいとされています[1]。
サインは飼い主が見落としやすく、主に次のようなものがあります[1][7]。
説明のつかない体重や筋肉の減りは、病気として調べるべきだとされています[7]。どの病気かは検査しないとわからないので、気づいたら早めに受診してください。
早く見つけるには、健診で血液と尿を調べる
早く見つけるには、症状が出る前の健診が役に立ちます[1]。体重・血液・尿の検査を組み合わせます[1]。
国際的な指針(2026年)では、7〜10歳は年1回、10歳を超えたら年2回が健診の目安です[1]。
米国猫臨床医協会も、7〜10歳から少なくとも年1回、年齢とともに回数をふやすよう勧めています[7]。
健診で異常がなかった11歳以上の猫の24%が、2年以内に腎臓の数値が上がったという報告があります[1]。1回で安心せず、続けて調べることが大切です。
尿を濃くする力が落ちるのは、早いサインのひとつです[1]。血液の数値が上がる前に見られることが多いとされています[1]。
ただし、尿の濃さはごはんの水分でも変わります[8]。そのため、血液検査や体重とあわせて判断します[7]。
血液検査では、クレアチニンとSDMA(どちらも腎臓の働きを見る数値)を使います[9]。
クレアチニンは、腎臓の働きが約75%失われるまで上がらないことが多いとされます[10]。SDMAは約40%の段階で上がると、コーネル大学は解説しています[10]。
ただし、その後の研究では、腎臓の働きとの関係の強さは2つで同じくらいとされています[1]。SDMAは甲状腺の病気などでも上がり、万能の検査ではありません[1]。
国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)は、SDMAが続けて高ければ、早期の診断に使えるとしています[9]。1回の結果だけで決めるものではありません[9]。
診断されたあとのごはんは、獣医師と決める
腎臓病と診断された猫では、ごはんの調整に強い根拠があるとされています[1]。腎臓用の療法食で生存期間が延び、尿毒症(毒素が体にたまる状態)の発作が減るとされています[1]。
いちばん大事な栄養素はリンです[1]。療法食の目的を「たんぱく質を減らすこと」と考えるのはよくある誤解だと、IRISは説明しています[2]。
腎臓病は、進み具合によって4つのステージに分けられます[9]。IRISは、ステージ2で療法食を検討し、ステージ3と4では与えることを勧めています[2]。
ステージ2では、食欲が落ちる前の早い時期のほうが切り替えやすいとされています[11]。ステージ1でどうするかは、まだはっきりしていません[2]。
新しいごはんは、1〜2週間以上かけて、今のごはんの横に少しずつ出します[1]。体調が悪いときに始めると、そのごはんを嫌いになることがあります[1]。
療法食だけを食べるのが理想です[1]。ただ、食事の半分以上が療法食なら、生存に良い影響がありうるとされています[1]。
健康な猫とリンについて、正直に言えること
「リンが少ないごはんなら、健康な猫も腎臓病になりにくいのでは」と考える人もいます。今わかっていることを、そのまま紹介します。
これを確かめたランダム化試験(くじ引きで分けて比べる試験)は、調べた範囲では英国の1件です[3]。9歳以上の健康な猫54匹を、18か月追いました[3]。
腎臓病になった割合は、たんぱく質とリンを控えたごはんで12%、ふつうのごはんで11%でした[3]。はっきりした差はありませんでした[3]。
ただし、小さく短い試験だったため、差を見つける力が足りなかった可能性が指摘されています[12]。「効かない」と決まったわけでも、「効く」とわかったわけでもありません。
リンについての研究をまとめた論文(総説)もあります[12]。結論は「市販のキャットフードのリンが、健康な猫の腎臓病を起こす根拠は今のところない」です[12]。
この総説は、大手ペットフード会社2社の資金で作られ、著者にも両社の社員が入っています[12]。また、「根拠がない」は「安全と証明された」という意味ではありません。
リンには、肉などにもともと含まれるものと、加工のときに加える「リン酸塩」(無機リン)があります[13]。
ある試験では、加えたリン酸塩が多いと、食後の血液のリンが上がりました[13]。食材由来のリンでは上がりませんでした[13]。食後の一時的な変化を見たもので、腎臓病を調べたものではありません[13]。
無機リンの試験には、腎臓に負担が出たものと、悪影響がなかったものの両方があります[14][15][16]。
吸収されやすいリンを必要量の約5倍与えた29日間の試験では、腎臓の負担を示す変化が出ました[14]。
リン酸塩を大量に加えた別の試験は、4週間で腎臓の働きが落ちて中止されました[15]。どちらも、市販のフードよりかなり多い量で、期間も短い試験です[14][15]。
一方、水に溶けやすいリン酸塩を加えたごはんを、75匹に30週間与えた試験があります[16]。こちらでは、腎臓や骨への悪影響は見られませんでした[16]。ただし30週と短く、もっと長い期間の影響はわかりません[16]。
これらの試験の多くは、ペットフード会社の研究者によるものです[13][15][16]。
総説も、無機リンの安全な上限を決めるにはデータが足りないとしています[12]。今のところ、安全な上限は決まっていません[12]。
このサイトの「リンの量を比べる」ページは、表示の数字を比べるためのものです。病気にならないための道具ではありません。腎臓病と診断された猫のごはんは、獣医師の指示に従ってください[2]。
今日からできること
- 体重を月に1回量って記録する。腎臓病の猫では、診断の3年前から体重が減っていたという報告があります[6]。
- 7〜10歳は年1回、10歳を超えたら年2回、血液と尿の検査を含む健診を受ける[1]。
- トイレ掃除のときに、おしっこの量や回数がふえていないか気にかける[1]。
- 水をよく飲む、体重が減ったと感じたら、次の健診を待たずに受診する[7]。
- 健診では歯と歯ぐきも診てもらう。歯周病と腎臓病には関係があるという報告があります[4]。
- 腎臓病と診断されたら、ごはんは獣医師と相談して決める。療法食はステージ2から検討されます[2]。
このページは一般的な情報です。病気の診断や治療の代わりにはなりません。気になる症状があるときや、持病のある猫のごはんは、獣医師に相談してください。
出典
- iCatCare Veterinary Society / Journal of Feline Medicine and Surgery「2026 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of chronic kidney disease in cats」(2026) pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13554608/
- International Renal Interest Society (IRIS)「Diets for Cats with Chronic Kidney Disease (CKD)(Quimby J, Ross S。原著 Polzin DJ 2016)」 www.iris-kidney.com/diets-for-cats-with-chronic-kidney-disea
- Journal of Veterinary Internal Medicine「The Effect of Moderate Dietary Protein and Phosphate Restriction on Calcium-Phosphate Homeostasis in Healthy Older Cats (Geddes RF et al.)」(2016) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27527663/
- Journal of the American Veterinary Medical Association「Survival analysis to evaluate associations between periodontal disease and the risk of development of chronic azotemic kidney disease in cats (Trevejo RT et al.)」(2018) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29504859/
- Veterinary Record「Chronic kidney disease in cats attending primary care practice in the UK: a VetCompass study (Conroy M et al.)」(2019) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31023949/
- Journal of Veterinary Internal Medicine「Evaluation of Weight Loss Over Time in Cats with Chronic Kidney Disease (Freeman LM et al.)」(2016) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27527534/
- American Association of Feline Practitioners (AAFP) / Journal of Feline Medicine and Surgery「2021 AAFP Feline Senior Care Guidelines」(2021) pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10812122/
- British Journal of Nutrition「Effect of dietary water intake on urinary output, specific gravity and relative supersaturation for calcium oxalate and struvite in the cat (Buckley CM et al.)」(2011) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22005408/
- International Renal Interest Society (IRIS)「IRIS Staging of CKD (Modified 2026)」(2026) www.iris-kidney.com/s/IRIS_staging_guidelines-2026.pdf
- Cornell Feline Health Center, Cornell University College of Veterinary Medicine「Chronic Kidney Disease」(2025) www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/corne
- International Renal Interest Society (IRIS)「Treatment Recommendation for CKD In Cats (2026)」(2026) www.iris-kidney.com/s/IRIS_CAT_Treatment_Recommendations_-20
- Journal of Veterinary Internal Medicine「A review of phosphorus homeostasis and the impact of different types and amounts of dietary phosphate on metabolism and renal health in cats (Laflamme D et al.)」(2020) pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7694857/
- British Journal of Nutrition「Not all forms of dietary phosphorus are equal: an evaluation of postprandial phosphorus concentrations in the plasma of the cat (Coltherd JC et al.)」(2019) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30420000/
- Journal of Feline Medicine and Surgery「Effect of a high phosphorus diet on indicators of renal health in cats (Dobenecker B et al.)」(2018) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28569079/
- British Journal of Nutrition「Effects of the long-term feeding of diets enriched with inorganic phosphorus on the adult feline kidney and phosphorus metabolism (Alexander J et al.)」(2019) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30572965/
- British Journal of Nutrition「Towards establishing no observed adverse effect levels (NOAEL) for different sources of dietary phosphorus in feline adult diets: results from a 7-month feeding study (Coltherd JC et al.)」(2021) pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33550999/
確認日:2026-10-17。このページは獣医師の監修を受けていません。上の資料をもとに、運営者がまとめています。