手作り食で気をつけたいこと(栄養・生肉・食材)
手作り食をするなら、レシピは獣医栄養の専門家と作ることがすすめられています。本やネットのレシピの多くは栄養がそろっていないという研究があり、生の肉には細菌や寄生虫のリスクもあります。
- 本やネットにある猫の手作り食レシピ114件を調べた研究では、すべての栄養を満たすものはありませんでした。
- 手作り食をするなら、獣医栄養の専門医への相談がすすめられています。レシピどおりに作り続けることも大切とされます。
- 生の肉には、猫や人にうつる細菌や寄生虫がいることがあります。厚生労働省は、ペットに生肉を与えないよう呼びかけています。
- 総合栄養食に足すものは少しにとどめます。米国の獣医の団体は1日のカロリーの10%まで、環境省はおやつを20%以内としています。
レシピの多くは栄養が足りないという研究
米国の大学の研究で、本やネットにある猫の手作り食レシピ114件を調べました。分析できた94件のうち、猫に勧められる栄養の量をすべて満たすものはありませんでした。
足りないことが多かったのは、コリン、鉄、ビタミンB1、亜鉛、マンガン、ビタミンE、銅でした。獣医師が書いたレシピやサプリメントを使うレシピは、足りない栄養が少なめでした。それでも、すべてを満たすものはありませんでした。
作り方の説明があいまいなレシピも多く、114件中113件にのぼりました。46件には、どれだけ与えるかが書かれていませんでした。
ブラジルの研究では、ネットのレシピで猫の手作り食25件を実際に作り、成分を分析しました。すべての栄養を満たすものはなく、猫では鉄と亜鉛の不足が多く見られました。
米国動物病院協会の指針も、本やウェブサイトのレシピの多くは、獣医師が書いたものでも栄養がそろっていないとしています。
環境省も、手作りの食事では栄養素の不足が起こりやすいので、栄養成分を計算したうえで与えるよう呼びかけています。総合栄養食を与えていれば、栄養の不足は起こりにくいとしています。
猫に必要な栄養と、与えてはいけない食材
猫は「完全な肉食動物」で、動物性の食べ物にしかない栄養に頼っているとされます。
たとえば、タウリン・アルギニン・メチオニン・システインといったアミノ酸(たんぱく質のもと)は、食事からとる必要があります。植物には含まれず、足りないと体調をくずすとされます。
ビタミンA・D・B3も、動物にある形でとる必要があります。必須脂肪酸(体で作れない脂肪の成分)も、動物性の脂肪からとる必要があるとされます。
タウリンが足りないと、心臓の筋肉がうすくのびる病気(拡張型心筋症)になることがあります。今はほとんどのキャットフードにタウリンが十分加えられ、この病気はとても少なくなったとされます。上の研究では、獣医師のレシピでも、タウリンが足りているか確かめられないものがありました。
一方で、多ければよいわけでもありません。ビタミンやミネラルはとくにそうで、サプリメントは獣医師の了承なしに与えないよう勧められています。人用のサプリメントには、猫に毒になるものもあるとされます。
人の食べ物でも、猫に害になるものがあります。環境省は、次のものを「与えてはいけないもの」としています。
- タマネギ・ネギ・ニラ・ニンニク:赤血球をこわす成分があり、加熱しても分解されません。ハンバーグやカレー、すき焼きの煮汁などもだめです。
- チョコレート:猫でも、吐く、下痢、けいれんなどを起こすことがあります。
- キシリトール入りのガムなど
- 鶏の骨:縦にさけやすく、のどや消化管(食べ物の通り道)を傷つけることがあります。
- 生の魚介類(イカ・タコ・エビ・カニ・貝など):ビタミンB1が足りなくなり、後ろ足がまひすることがあります。魚介類は必ず加熱します。
- ブドウ・干しブドウ:腎不全の原因になるとされます。
環境省は「注意が必要なもの」も挙げています。レバーはビタミンAが多く、与えすぎないようにします。生卵の白身は、与え続けるとビオチン(ビタミンの一種)が足りなくなることがあります。にぼしや海苔は、マグネシウムのとりすぎから尿の病気につながることがあるとされます。香辛料やコーヒー・お茶も、注意が必要とされます。骨は、加熱したものも生のものも危険とされます。
作るなら、獣医栄養の専門家に相談を
米国動物病院協会は、手作り食を続けたい飼い主には、獣医栄養の専門医(学会が認定した、栄養が専門の獣医師)への相談を勧めています。
コーネル大学は、手作りは手間がかかり、レシピに必要な栄養が正しい量と割合で入っていないことがあるとしています。治療のために獣医師が手作り食を勧める場合は、動物栄養の資格を持つ獣医師が作ったレシピになるだろう、としています。
栄養が足りるレシピを作るには、栄養の専門知識と、計算のためのソフトが必要とされます。
- レシピは書かれたとおりに作ります。とくに、ビタミン・ミネラル・アミノ酸のサプリメントを省かないことが大切とされます。
- 少しずつレシピを変えてしまう飼い主は多いとされます。材料を替えたくなったら、先に相談しましょう。
- サプリメントの中身も変わることがあるため、レシピは年に1回、専門医と見直すよう勧められています。
- 健診のたびに、今もレシピどおりに作っているかを獣医師に伝えます。獣医師が受診のたびに確かめるよう勧められています。
まずは、かかりつけの獣医師に「手作り食をしたい」と相談しましょう。理由(食べない、持病がある、など)も伝えましょう。
生の肉(生食)で言われているリスク
環境省は、生の豚肉や野生の鳥獣の肉には、有害な寄生虫や細菌がいるおそれがあるとしています。肉を与えるときは加熱するよう勧めています。
厚生労働省も、ペットに生肉を与えてはいけないとしています。生肉や加熱が足りない肉には、有害な寄生虫や食中毒菌、薬が効きにくい菌がいる可能性があるためです。
オランダで市販の冷凍の生食35製品を調べた研究では、腸管出血性大腸菌O157が23%の製品から見つかりました。リステリア菌(食中毒を起こす菌)は54%、サルモネラ菌は20%、寄生虫のトキソプラズマは6%の製品から見つかりました。
米国食品医薬品局(FDA)も調べています。生のペットフードは、ほかのフードより病気を起こす細菌に汚染されていることが多かったとされます。
コーネル大学は、生食が猫の健康によいという科学的な根拠は今のところないとしています。細菌やウイルス、寄生虫が猫と飼い主にうつるおそれがあるため、勧めないとしています。
米国では、市販の生のペットフードや殺菌していない牛乳に関係した、猫の鳥インフルエンザの感染も報告されています。
- 生食を与える飼い主は、サルモネラ菌やリステリア菌に感染するリスクが高くなるおそれがあるとされます。
- 犬や猫は、症状がなくてもサルモネラ菌を出すことがあるとされます。
- トキソプラズマは、妊娠中に初めて感染すると、おなかの赤ちゃんにうつることがあります。対策の1つに「猫に生肉を与えない」が挙げられています。
- 猫のお腹の寄生虫には人にうつるものがあり、対策の1つに生肉を与えないことが挙げられています。
- 「高圧処理(HPP)」と書かれた生食でも、無菌ではないとされます。
生の肉や生のペットフードをさわったら、せっけんと水で20秒以上手を洗い、ふれた場所や物を洗って消毒するよう、FDAは勧めています。ペットに顔をなめさせないことも挙げています。
総合栄養食とトッピングの関係
総合栄養食は、毎日の主な食事として、新鮮な水と一緒に与えれば健康を保てるよう、栄養のバランスを整えたフードです。
総合栄養食に足して与えるものは、市販品でも人の食べ物から作ったものでも、「おやつ」として扱われます。
米国動物病院協会は、総合栄養食を全体の90%以上にし、ほかの食べ物は10%以下にするよう勧めています。栄養のそろわない食べ物が1日のカロリーの10%を超えると、必要な栄養がうすまり、カロリーもとりすぎになるとしています。
環境省は、おやつを1日に必要なエネルギーの20%以内にし、与えた分だけ主食を減らすよう勧めています。目安の数字は、団体によって違います。
おかずタイプ(一般食)は、総合栄養食と一緒に与えるフードです。総合栄養食をあまり食べないからと、おかずタイプを主にして太った例も紹介されています。
- ゆでた皮なしの鶏むね肉は、28gで47kcalほどです。1種類をこの量あげるだけで、おやつの上限を超える猫も多いとされます。
- トッピングの材料に、タマネギなど与えてはいけないものが入っていないか確かめます。
- 持病があって療法食を食べている猫には、一般的なおやつが合わないことがあります。足す前に獣医師に相談しましょう。
- おやつで食事の代わりにしないよう勧められています。
今日からできること
- 手作り食をしたいときは、まずかかりつけの獣医師に相談する。レシピは獣医栄養の専門家と作る。
- 本やネットのレシピを主食にする前に、専門家に見てもらう。多くは栄養がそろっていないという研究があります。
- 作るときはレシピどおりに。サプリメントも省かない。
- 肉や魚介は、しっかり加熱してから使う。
- 生の肉をさわったら、せっけんと水で20秒以上手を洗い、台や道具も洗う。
- タマネギ・ネギ類、チョコレート、ブドウ、鶏の骨を材料に使わない。
- トッピングは少しにとどめ、足した分だけ主食を減らす。
このページは、飼い主さん向けの一般的なお話です。気になる様子があるときや、持病のある子のごはんは、かかりつけの先生に相談してくださいね。
参考にした資料(17件)
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- 環境省 自然環境局 動物愛護管理室「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~(2.市販のペットフードについて)」(2018) www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide
- 環境省「知って納得!ペットフードの表示」(2011) www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2305b/full.p
確認日:2026-10-17。獣医師の監修は受けていません。上の資料をもとに、運営者がまとめています。